地球温暖化:「海洋にもたらす影響」を科学的に分かりやすく解説!

科学の知見
キャサリン
キャサリン

最近「日本では魚が獲れなくなってきている」って問題になっているけど、世界の魚の漁獲量は年々上がっているらしいよ~!

地球温暖化って本当に海洋問題につながっているの??

Yum@
Yum@

よく知っているね!

ニュースではよく、海水温上昇で魚の行動範囲が変化するっていうよね。

でもそれだけだったら、全然たいした問題ではない気がするよね~。

じゃあ今回は「地球温暖化は海洋へどんな影響があるのか」を掘り下げていくよ!!

こんにちは、Yum@です!

「地球温暖化」という言葉に慣れすぎてしまって、下火になりつつある今日このごろ。

そんな今だからこそ、考える価値のある「地球温暖化」について、海洋への影響に着目して考えて行きましょう!!

-この記事の内容-
・地球温暖化の海洋への3大ストレス
・3大ストレスの詳しいメカニズム
・日本で漁獲量が減少している理由

前提として知っておきたい漁獲量の話

世界の漁獲量は上がっている??

最近、地球温暖化による海面上昇で魚の行動範囲が移動して、日本で魚が獲れなくなっているというニュースをよく耳にします。

「これを聞くと、魚が減っているわけじゃないのか」と少し安心してしまいます。

実際に、下の水産庁の「世界の漁業・養殖業生産量の推移」のグラフからもわかるように、世界的な漁獲量は年々増え続けています。

水産庁「水産白書」より

グラフを見て分かる通り、養殖業の発展が大きく寄与しています。

これを見てホッとして人もいるかも知れません。

しかし、将来的には地球温暖化により、生き物の住めない海が増加し、漁業に大ダメージを与えると言われています。

日本の漁獲量が減少している理由

農林水産省によると、漁獲量が昔に比べ減少した主な理由は以下の通りです。

・各国の排他的経済水域の設定による海外漁場からの撤退

・乱獲

・漁場環境の悪化

中でも漁場環境が悪化の原因として、具体的には3つのことがあげられます。

・地球温暖化による海水温上昇

・地球温暖化による海中酸素濃度の減少

・海の汚染

この環境問題を抱えているのは、日本の海だけでなく世界の海に共通することです。

キャサリン
キャサリン

海中酸素濃度の減少はよくわからないけど、あとの二つはよく聞くねぇ!

もっと詳しく知りたい!!

地球温暖化が引き起こす、海洋生態系への三大ストレス

ここからは、本題の地球温暖化がもたらす海洋への影響について詳しく見ていきます。

地球温暖化が引き起こす海洋生態系への三大ストレスは以下の通りです。

・貧酸素化

・海洋酸性化

・海水温上昇

これらの各影響は数10年単位でゆっくりと進行していきます。

気づいた時にはもう手遅れとならないためにも、「それぞれの仕組みや、どんな影響をもたらすのか」を考えていきましょう!

貧酸素化

まずは、「貧酸素化」について見ていきましょう。

貧酸素化は主に水温上昇によって引き起こされます。

水に溶ける酸素は水の温度によって決まります。

理科年表オフィシャルサイトの「気体の水に対する溶解度」を見てもわかるとおり、酸素は水の温度が高いと水に溶けにくくなります。

このグラフでは、溶媒(物質を溶かすための液体(ここでは水))の量は1㎤です。

海水温が15℃から20℃に上がるとすると、酸素の溶解度が0.005㎤程度下がるので、溶けることのできる酸素の量が15%ほど低下してしまいます。

ただでさえ海水酸素濃度は高濃度の場所でも1%ほどであり、酸素濃度が低い深海(光が届かなくて植物が生息せず、大気からも離れているため)なども考えると、地球温暖化により深海は無酸素化してしまいます。

こうしてみると、貧酸素化というものがいかに悲惨かがわかります。

このようにして、酸素が少なくなった地域には生き物が生息できなくなります。

海洋酸性化

海洋酸性化のメカニズム

続いて、一番わかりにくいであろう海洋酸性化について説明します。

海洋酸性化というのは、主に大気中の二酸化炭素が増え、海中に二酸化炭素がより溶け込むために起こります。

二酸化炭素と水が化合すると炭酸となります。

CO2 + H2O ⇄ H2CO3(炭酸)   (1)

炭酸は水中では下のように炭酸水素イオン、炭酸イオン、水素イオンの3つで電離平衡を保ちます。(2)(3)

※平衡とは…簡潔に言うと変化を与えなかったら、化学反応が進行しない状態(つりあっている状態)のことを指す

H2CO3 ⇄ HCO3 + H+ (2)

HCO3 ⇄ H+ + CO32- (3)

ここで、平衡状態では変化を和らげる反応が進むという性質(ルシャトリエの原理)があるので、炭酸が増えれば増えるほど水素イオンが発生します。

※炭酸が増えれば増えるほど(2)(3)は右への反応が進む
ルシャトリエの原理は東工大生が解説:勉強をしなきゃいけない理由の記事で説明した「この世の物質は、より安定な状態で存在しようとする」という性質と似ています。

つまり、海洋酸性化のメカニズムは「二酸化炭素が増えるほど、炭酸が生成されるようになり、水素イオンが増えて、海が酸性化する」というものです。

海洋酸性化がもたらす影響

海洋酸性化がもたらす主な問題点は以下の2つです。

  • 海に二酸化炭素が海に溶けにくくなることによる、大気での温暖化の加速
  • 海洋生物の外骨格がもろくなる

今までは二酸化炭素の過剰分が海洋に溶かしてなんとか大気中の濃度を保っていました。

しかし海洋酸性化が進むと、二酸化炭素が炭酸として海洋により溶けにくくなっていきます。

そして二酸化炭素の大気濃度がより高くなっていき、地球温暖化を促進します。

Yum@
Yum@

海水の温度が上がることでも、貧酸素化と同じように二酸化炭素が海にとけにくくなるよ!

またそれだけではなく、海洋酸性化は海洋生物の成長に甚大な被害を与えます。

例えば、サンゴやウニなどの多くの海洋生物は海中のカルシウムイオンから外骨格となる炭酸カルシウムをつくっています。(4)

Ca2+ + CO32- ⇄ CaCO3(炭酸カルシウム)   (4)

この反応には炭酸イオンが関係していますが、水素イオンが多い海では炭酸イオンが炭酸水素イオンの生成に使われてしまうため、海中炭酸イオン濃度が減り、炭酸カルシウムの生成が難しくなってしまいます。

またこれは同時に炭酸カルシウムが分解されやすくなること((4)の左方向の反応)でもあるので、海洋生物の外骨格がもろくなってしまします。

海水温上昇

最後に、一番なじみの深い「海水温上昇」についてです。

海水温上昇のメカニズムは、皆さんご存知のように、温室効果ガスにより地球が温められることに起因するものです。

水温上昇は先ほどの貧酸素化、海洋酸性化にも関わりが深いですが、ここでは単純な海水の温度上昇が与える影響について考えていきます。

つまり皆さんご存じ「生態系の崩壊」についてです。

ここでは、海水温上昇による生態系崩壊がいかに恐ろしいことかを具体例を挙げながら見ていきましょう!!

世界にはキーストーン種という生態圏の中でも「この生き物の増減によってその他のすべての生物種の生命の存続に関係する」という種が存在します。

※キーストーンというのは下の画像のような昔の橋や門を支える一番上の石のことです。

つまり、これが崩れるとすべて崩れるという意味が含まれています。

キーストーン種の例を挙げると、オオカミ、ラッコ、ジャガー、ヒトデ、アフリカゾウ、ミツバチなどで、生態系の上に存在する種が多いです。

近年、キーストーン種の個体数が減少することが、海水温上昇によって起こっています。

海水温上昇がどう生態系に影響しているのか、その中でもラッコについて見ていきましょう。

ラッコは北太平洋や北アメリカ近海に主に生息しています。

それらの地域では昔からラッコが生態系の頂点であり、ラッコが主にウニを食べ、ウニがジャイアントケルプ(海藻)を食べるというサイクルで成立していました。

ラッコがキーストーン種と言われる理由は、ジャイアントケルプのウニからの保全にあります。

ジャイアントケルプはサンゴ礁と同様に多様な生き物の住処になっています。(ラッコも含む)

ラッコは皆の住処の護衛役、いわば警察のようなものです。

このような平和な生態系に近年シャチやワシが介入するようになってしましました。

それは、シャチやワシのエサである魚が、海水温上昇の影響で、冷たい海を求めて北上したからです。

近年、そんな海のハンターが近海のラッコを食べ、生態系の頂点になってきています。

そしてラッコは減少し、ウニは急速に増え、ジャイアントケルプ(住処)が急速に減り、その地域のすべての生態系を破壊するという結果につながっています。

キャサリン
キャサリン

生態系が壊れる仕組みはわかったけどさぁ~

なんで、ワシとシャチは魚と一緒に北上しないんだろう???

Yum@
Yum@

それは、魚が変温動物である一方ワシやシャチは恒温動物であるからという理由が大きいよ

変温動物は環境に合わせて体温を変えるという動物です。

恒温動物というのは私たちのような、環境が変わっても体温を一定に保っている動物です。

変温動物は適応温度範囲が小さいため温度変化に弱い一方で、恒温動物はその逆です。

リアム
リアム

私たちも住む地域の温度が変わったとしても、数度程度だったら、動けなくなるなんてことはないよね。

ワシやシャチにとっては、北上するより近海にはまだ食べられる動物(ラッコ)がいるので、ラッコを食べるという選択のほうが楽なのでしょう。

このように、海水温上昇は生態系をめちゃくちゃにするとんでもない現象なのです。

まとめ

-地球温暖化がもたらす海洋生態系への三大ストレス-
・貧酸素化
・海洋酸性化
・海水温上昇

-三大ストレスの影響-
貧酸素化…海洋生物が生息できない無酸素地帯が増加する
海洋酸性化…①地球温暖化が加速する②海洋生物の骨格がもろくなる
海水温上昇…生態系大崩壊

地球温暖化で水温が上昇するのは有名ですが、貧酸素化と海洋酸性化はあまり聞いたことがなかったことと思います。

地球温暖化以外にも、地球の環境問題は課題が山積みです。

海洋問題だけを見ても、マイクロプラスチック問題やごみ問題、生活排水問題など、様々ことが海洋問題を引き起こしています。

地球をすべての生物にとってよりよい場所にしていきましょう!

P.S. 余談ですが、この記事を書いていて、貧酸素化と海洋酸性化も高校化学で説明できるということに感動しました!

リアム
リアム

今日も最高の1日にしていこう!!

See you later !!

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